【複雑な采配の行末は?】100系スペーシア後継「N100系」投入で変わる東武特急

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東武鉄道では2021年11月11日、フラッグシップ新型特急車両として「N100系」6両4編成の投入を明らかにしました。

発表内容と特徴を踏まえつつ、近年の東武特急の車両動向を踏まえた今後の展開を考えます。

以前から計画されていた「フラッグシップ特急」構想

東武鉄道では以前より中期経営計画にファンの目を惹く記述が入ることが多く、東上線〜地下鉄直通の優等列車設定・野田線優等列車拡大などの目玉となる内容はこれが初出となっていました。

2017年〜2020年の中期経営計画では「フラッグシップ特急の導入」が「特急車両500系の増備」と共に掲げられていました(現在は東武グループホームページから削除済)。しかし、2020年以降に出された各種発表ではほとんど触れられておらず、コロナ禍もあって計画が中止または先送りされたのではないか?という見方も出来る状態でした。

最近では日光・鬼怒川線で運用される100系“スペーシア”や200型,250型「りょうもう」が2021年で就役30周年を迎えることに関連してさまざまなリバイバルカラーの運行が開始された一方で、コロナ禍で休止していた「きぬ」「けごん」の車内販売が終了となるなどの変化もありました。

発表された「N100系」

画像:東武鉄道ニュースリリースより

2021年11月11日、東武鉄道から「2023年に特急スペーシアの新型車両を導入します」(PDF)・日立製作所から『日立が東武鉄道の新型特急車両「N100系」の製作会社に決定』(外部リンク)との発表があり、新型「N100系」6両固定4編成が2023年に導入されることが明らかになりました。

概要はリリースを既にご覧の方が多いかと思うので、ファン目線での注目ポイントをいくつかピックアップします。

車両のイメージ画像は白色でまるで未定のような印象ですが、リリースを読むと『日光東照宮陽明門・唐門・御本社に塗られた「胡粉(ごふん)」の白を彷彿とさせる高貴な白をイメージ』したものとされており、これが完成形であることが分かります。

車内仕様としては「現スペーシアにある個室も継承」「ラウンジなど新たに様々なタイプの座席を用意」との記述があり、乗り鉄目線ではかなりの注目株です。

また、惜しまれつつ営業を終えた“スペーシア”の「ビュッフェ」と車内販売営業ですが、「カフェカウンター」と名称を変えつつ、「ここでしか出会えない五感で楽しむ商品等を提供」とされており期待が持てます。

位置付けとしては JR東日本「サフィール踊り子」・近鉄「しまかぜ」のような、“フラッグシップ”の色合いが強く、現行車両とは内外ともに異なる印象を受けます。一方で、内容の随所に現行の100系の進化であることが触れ込まれており、運行本数も他社の“フラッグシップ特急”と異なり比較的多くなりそうです。

現時点では抽象的な内容も多く、SNSでも受け取り方は様々でした。

このほか、東武鉄道車両を日立製作所が再び受注したことも注目されます。

日立製作所から東武鉄道への車両投入は期間が飛び飛びとなっており、過去には7860型から50000型まで半世紀近い期間がありました。

50000系列400両・60000系18編成108両の製造を手掛けたものの、それ以降は70000系列が近畿車輛・500系“リバティ”が川崎重工業となり、2015年納入の61618Fから再び少し期間が開いたのちの受注となっています。

日立製作所笠戸事業所(山口県・山陽本線下松駅付近)で製造されることも示されており、早くも落成直後の甲種輸送を楽しみにするファンの声も多く聞かれました。

複雑な置き換えが進む東武特急

現在の東武特急は4形式が運用されていますが、置き換え動向を把握するには2017年3月までの運転体系を基本とすると理解がしやすいところでしょうか。

この時点では、100系“スペーシア”9編成が日光線系統の各列車に、200型,250型の計9編成が浅草〜伊勢崎線系統の「りょうもう」に使用され、これに加えて300型6両編成,350型4両編成が100系の補完として日光線系統や東武宇都宮線直通などで使用されていました。

2017年4月よりデビューした500系“リバティ”3両8編成の運転開始は白紙のダイヤ改正となり、従来の「A期間・B期間」(JRで言う繁忙期と閑散期に近い)の2種類のダイヤから「平日・土休日」で運転日を分ける体制となりました。

「リバティけごん」「リバティきぬ」「リバティ会津」「リバティりょうもう」として500系の特徴である分割併合構成を活用したダイヤ構成とされています。

車両側の運用変化では、元々余裕が少なかった100系の運用を一部代替するだけでなく、日中時間帯の日光線・鬼怒川線の6050型普通列車の代替や東武アーバンパークライン直通の特急「アーバンパークライナー」新設、春日部発着けごんを「スカイツリーライナー」としての増発なども含んでおり、単純な新旧比較はしにくい印象です。

これ以降は、2020年度に追加投入された500系“リバティ”3両3編成は200型1編成をそのまま置き換え・コロナ禍でダイヤの見直している状態です。

これまでの代替は、300系列に加えて200系列の代替を中心としていますが、依然として伊勢崎線系統では200系列が中心・350型も数を減らしつつ維持されています。

今後展開されるシナリオ

今回のフラッグシップ「N100系」の投入により、100系についても一部編成の廃車が前提であることが伺えます。100系で原色復元などのリバイバルが実施されていますが、これ自体も引退を見据えた動きと言えそうです。

特に、短期的な動向はある程度答えが見えつつある状態です。

2021年8月の運用持ち替えでは、500系が平日10運用,土休日11運用と余裕の少ない体制とされた一方で、100系の運用数は平日・土休日ともに6運用と減らされています

土休日のJR直通臨時列車がある場合でも7運用に留まり、現行の9編成を維持するつもりとは考えにくく、N100系の投入を待たずに100系の廃車が部分的に先行するという見方が有力です。

これに加え、リバイバルカラー化対象の編成番号が既に明らかにされており、これらの車両は少なくとも次回の定期検査が約束されている編成です。

これらの状況を総合すると、リバイバル化予定なし・特別装飾なし・荷物置場追設もなし・検査時期も遠くない104Fが部品取りを兼ねて廃車とするのが最も自然と言える状態です。

これまで200系列・300系列の置き換えを断片的に行うことで老朽化した車両の予備部品を確保する狙いが伺える状態と同様です。

検査順番号JR荷物
置場
検査時期目安
(前回+2年8ヶ月)
前回検査
109F原色2021年6月2日2018年9月22日
108F原色2021年10月15日2019年2月21日
101FDRC入場中2019年4月
104Fオレンジ不明2022年3月頃2019年7月12日
103F日光詣不明2022年6月頃2019年10月前半
106F日光詣不明2022年8月頃2019年12月25日
102F原色2022年11月頃2020年3月5日
105F原色2023年2月頃2020年6月上旬
107F原色2023年8月頃2020年12月11日

しかしながら、2023年以降の最終的な東武特急の布陣はなかなか見えてきません。単純に考えれば下記のいずれかが想像できます。

① 最終的にN100系を追加投入して100系を代替

② フラッグシップは4編成に留め、残りの100系の代替は500系

③ 100系は一部編成の廃車で部品を確保し、当面は併用前提(それ以降の計画は未定)

このうち②については、JR直通をN100系とする計画なのか500系とするのかで更に分岐します。報道を見る限りは、③のまだ確定していない……が実態でしょうか。

現時点で車両の将来を伺うことが出来ることとして、大型荷物置き場設置改造が一部編成(103F,109F)に留まっている点・この改造対象からJR直通対応編成(106F〜108F)が除外されている点が注目されます。

この改造を受けた編成は当面残存することが想像できるものの、JR直通については直通先との調整の煩雑さを避けて改造していないという理由も否定できず、今後の動向は予想しにくい状態です。

「N100系」についても、現時点では自社線内の運用のみが示されていますが、これもJR東日本との調整が済んでいないことが背景であることが想像できます。

N100系を投入する場合は座席種類の増加見直しが発生することからシステム改修が必要であるほか、JR側も253系の代替が遠くない時期に差し掛かっていますので、この系統の運転体系・車両仕様を白紙改正するのに最適です。

平日の利用者数が少ないこの系統は、JR東日本が積極的な需要に応じた料金体系への見直しを同時に行う展開も有り得そうです。

通勤車後継は……?

余談にはなりますが、特急車の投入やSL客車の増強が積極的にPRされる一方で、ファンや沿線利用者からは通勤車両の今後についての疑問の声が多く聞かれます。

東武鉄道の近年の新造通勤車両は日比谷線直通用の70000系列がありましたが、これは東京メトロ日比谷線と足並みを揃えて進められたものでした。

それ以外の路線への新製車両はアーバンパークライン向けの60000系61618Fが2015年に導入されて以降途絶えており、同線では経年50年超えの編成も含む8000系が多く残存しています。

それ以外のワンマン運転で使用される8000系も経年40年超えが多数です。

このほか、東上線池袋口では少なくとも10年間は新造車が入らない期間が発生することとなります。2021年は9000系の試作車9101Fが就役40周年記念……などとしていますが、この編成も故障で長期離脱中です。

既存車のリニューアル状況も中途半端な状態で、20000系列の転用が続いたため、彼らより経年車の10000系列の多くがリニューアル工事も受けずに運用されている状態です。

通勤車の新造が久しく行われていない事業者といえば近鉄が有名ですが、特急車の置き換え数の多さを考えると、東武鉄道も向こうしばらくは近鉄と同様の展開が予想できます。多くの沿線利用者にとってはしばらく「冬の時代」と言わざるを得ません。

最近では、2021年11月5日には車両故障のため、東上線の定期列車を1往復運休としたことで注目されました。

車両運用では、引き続き20400型の運用拡大による6050型運用削減が進められているほか、最近では既にリニューアルを施工済みの10000系が津覇車両に入場する姿が確認されており、本線系統では部分的ながらも新たな動きも発生しそうです。

通勤車両にも何らかのテコ入れが行われることに期待したいところですが、大きな動きは2023年度以降でしょうか。

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