【振り返り】2022年3月改正で明確に方針が異なった本州JR3社の動き

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例年12月から各社の翌年3月ごろのダイヤ改正の概要が相次いで発表され、このなかでもJRグループとその直通先では中旬から下旬の同日に公表されます。

昨年は各社とも前例のない発表内容が多く、利用者はもちろんファン層さえ驚きの多い内容でした。

2020年春より通勤・ビジネス・観光のあらゆる方面で利用者の大幅な減少を受けた鉄道事業者が悩み抜いた内容がつまった2022年3月改正でしたが、特に本州3社では明確に方向が異なる内容となっていました。

2023年3月改正がどのような内容となるか予想が飛び交う今、改めてダイヤ面とその後の車両の動きから、各社は何を考え、どう対処してきたのか読み解きます。

三社三様のダイヤ改正

JR東日本:削減分で特急拡充

JR東日本の都心部各線では、列車本数削減が各線区で実施されました。

路線名朝ラッシュ
減便本数
日中
見直し
夕夜間
見直し
東海道線
高崎線
宇都宮線
▲2
▲1
▲2




横須賀線
総武線快速電車
▲1
▲1


山手線▲3+2
中央線快速▲1
青梅線▲1
中央総武線各駅停車▲4+1
京浜東北・根岸線▲2
常磐線快速(普通)▲4
常磐線各駅停車▲3
南武線▲1
横浜線▲2
京葉線▲2
山手,中央総武緩行は双方向の本数

他社・他路線と同様に、最大稼働数を抑制することで車両運用数を削減する狙いが読み取れる内容でした。このほか、地方線区でも減車・減便が実施されています。

在来線特急では、長らく大幅な運休が続いていた「成田エクスプレス」が千葉駅停車列車を増強する形で運転再開に至りました。千葉駅利用者から以前より希望する声が聞かれたもので、実際に定着しつつある利用動向もありこれは成功と言える内容です。

その他の特急では、常磐線特急「ひたち」「ときわ」の品川発着拡大・中央線特急「あずさ」「かいじ」の東京発着拡大と「かいじ2号」時刻繰り上げ・東海道線特急「湘南6号」の東京延長と新宿発着「湘南」の大崎駅停車など、朝ラッシュ時間帯のダイヤに余裕が生まれたところを最大限に活用する姿勢がうかがえる内容でした。

一方で、各特急とも利用が少ない列車は定期列車削減・区間短縮となっています。

新幹線でも長距離便を筆頭に、定期列車の一部を臨時列車として運転する体系に変更されています。

東北新幹線では新青森駅発着の「はやぶさ」の複数が臨時化、北陸新幹線は最速達の「かがやき」臨時化・上越新幹線は「とき」臨時化など、ややストレートな減便となっています。

一方で、盛岡駅以南については救済策が多く組まれており、盛岡駅発着の「はやぶさ」2往復は臨時化する代わりに「やまびこ」が延長・仙台発着で「つばさ」併結の「やまびこ」の多くは臨時化される代わりに盛岡発着「やまびこ」の一部が白石蔵王駅へ停車となるなど、途中駅は他の定期列車で補うダイヤ構成が特徴的でした。

このほか、少数の短距離便が運転取りやめとなりました。

行楽需要の増減には引き続き臨時列車設定で対応する体制となっており、この傾向は在来線特急・新幹線ともに前年度から継続しています。季節の臨時列車を多数設定する体制はコロナ禍以前からJR東日本の得意分野でしたので、妥当な対応策とも言えそうです。

JR東海:終電前倒しはするも……

JR東海の2022年3月改正では直近の輸送動向を踏まえた内容は軽微で、以前から計画していた315系8両固定編成投入による輸送体系刷新が目玉となっていました。

従来は4両から10両まで様々な両数の車両が行き交っていた中央西線の列車を全て8両編成での運転とするための変更で、朝ラッシュ時間帯には10両編成が減る分の補完として区間延長や増発が実施されています。

各事業者が最ピーク時間帯の減便により浮いた枠で着席サービス列車のダイヤを充実させるなか、ホームライナーが名古屋駅7:27着・8:59着とピークを避ける他社とは真逆の変更内容となっている点も興味深い改正でした。

ホームライナーの本数は削減こそされていますが、中央線の夕夜間帯の本数削減・区間短縮は313系8000番台の転属時点で計画済みの内容だったことが明らかで、純粋な利用者数の少なさからの削減は静岡エリアの土休日ホームライナーの運転取りやめ程度と言えます。

これらの傾向は新幹線でも同様です。

新幹線についても早朝・夜間帯の「のぞみ」一部列車の所要時間速達化とこれによる滞在可能時間拡大、接続改善など利用動向起因ではない内容がほとんどでした。

JR西日本:かなり厳しい改正内容

本州3社のなかでもかなり厳しい内容となったのはJR西日本でした。

京阪神エリアの朝通勤時間帯はJR東日本と同様に最ピーク帯の本数削減が各線で実施されています。

JR東日本では空いた枠を活用した都心直通特急拡充が行われた一方で、JR西日本ではダイヤの等間隔化を積極的に推し進めた点が特徴的です。

JR西日本でも朝通勤時間帯の特急拡充が記述されていますが、「くろしお6号」の運転時刻変更は通勤電車のダイヤ見直しによる副産物として前後特急との等間隔化がされた・「はるか7号」の運転再開は関空需要起因とJR東日本ほどの増収意図は強くなさそうです。

そして、何よりJR西日本の苦しい懐事情を色濃くしたのは、日中時間帯の閑散線区の本数削減です。毎時2本の列車を毎時1本に変更する内容で、以前から類似の動きがあって予想ができたとはいえ、沿線には大きな影響があったことは想像に難くありません。

JR西日本は不採算路線を多く抱えており、特にこの情勢下でより急いで対応する必要があったことが強く現れた内容でした。

このほかにも各線で一部列車の運転取りやめ・区間短縮が相次ぎました。終電時刻の繰り上げが実施された点は他社と同様です。

車両動向も各社でまちまち

日本中の鉄道事業者が経営面で大きな打撃を受けたことは言うまでもないですが、これに加え昨今では半導体不足をはじめとする様々な要件が生じており、車両の動向も複雑化していました。

2023年3月改正の内容が発表されると車両動向に関心が集まるところですので、こちらもダイヤ改正とその後これまでの車両動向を見ていきます。

JR東日本:余裕を維持した車両繰り

JR東日本ではJR・私鉄の大半の会社と同様に、朝ラッシュ帯の減便による車両運用数削減が実施されていましたが、JR東日本の特筆される点として、余剰車両はほぼ全てが予備車増=休車により検査期限延長に充てるのみとなっている点が挙げられます。

中央線快速電車の209系1000番台、京葉線の209系500番台といったマイナー形式や、大規模な余剰が生じた山手線E235系など従来なら転用・淘汰が想像しやすかった車両も全く動きがなく現在に至ります。

今回の2023年3月改正で列車本数を戻す方向になればこの判断が正解だったこととなりますが、現状で問題ないと判断された場合は楽観視だった……という見方もできる結果となります。

朝ラッシュの混雑・その他時間帯の需要も多少戻ってきており、労組資料でも「お客さまの戻りを加味した中での輸送施策」と記述されているなど、この答え合わせが今回のダイヤ改正の最注目ポイントとなりそうです。ファンのなかでは悲観的な予想も多く見られますが、意外にも現状維持・本数復活など前向きな動きもありそうです。

かつての通勤車路線はその余力を活かして朝ラッシュの本数増加など希望的な動きもありうるものの、中距離線区では前回改正内容であるダイヤの余裕から着席サービスの都心直通拡充を覆すまでは至らないと推測できます。

特に2022年3月改正では宇都宮エリアのE131系投入・減車による混雑が深刻なものとなって注目されました。この代替計画自体はコロナ禍前のものではあるものの、労組資料を読む限りは来春のダイヤ作成が現場主導となったことも読み取れますので、前回改正で運用数削減となったE231系基本編成による朝晩の黒磯直通復活なども決してあり得ない話ではなさそうです。

地方線区の動きでは、これまた新潟駅高架化工事完了を見越した動きとして115系・E127系代替が実施された点が話題となりました。

特に代替されたE127系は比較的経年が浅い車両で、意外に感じた方が多かったかと思います。

その後はE129系に集中的な車両故障が生じて急遽上越線で運用復帰し、それを終えた後は越後線で運用されました。まもなく撮影会が実施されるなど、次回改正に前後して動きが生じるであろうE127系2編成の今後が注目されます。

このほか、都心部では一切車両の動きがなかったJR東日本の2022年3月改正ですが、唯一運用削減起因と推定できる廃車は、高崎車両センターの211系A2編成でした。都心部のE531系運用削減→E501系一部淘汰なども想像しやすいところでしたが、こちらも改正時点では目立つ動きは生じていません。

在来線特急についても2022年3月改正では各方面とも区間短縮・夜間帯減便の動きがあった一方で、朝ラッシュ帯の都心直通拡充・車両折り返しの余裕に充てられており、運用数削減はE353系付属編成のみとなっています。

そのE353系付属編成についても昨今の臨時列車の運転本数を考えれば旧来体制に近づくことが想像されます。また、その他の削減区間・本数を復活させても全く問題ないため、常磐・中央・東海道特急については大きな動きはなさそうです。

在来線特急で目新しい動きは651系老朽化で動きがありそうな高崎線特急「あかぎ」「草津」関係のみとなりそうで、こちらも昨今の需要変動と直接的な因果はありません。

新幹線についても、減便はありながら車両動向としては動きは少なく、長野新幹線車両センターで水没した8編成の代替新造による置き換え遅れの動きが継続するものとなりました。

2023年3月改正でE7系の新造・代替新造双方が出揃うことにより、上越新幹線の最高時速275km/h運転開始・E2系が上越新幹線から撤退します。

一方の東北新幹線でも2022年度はE5系の増備はゼロであり、E2系のつばさ併結のやまびこ号の多くが6000番台のいわゆる準定期列車化がされたものの、これ自体の影響は少なくなっています。

一部では2023年3月改正で新青森延伸で増備されたJ70〜J75編成の6本のみを残して廃車という予想をする声もありますが、現行運用でも定期列車だけで7運用、臨時列車が最大稼働時に9運用ありますので、白紙改正をしない限りはJ69編成以前の車両も3〜5編成程度が残る計算です。

大規模な改正はE8系部分投入・E5系増備が推定される2024年春の一部列車スピードアップに合わせて実施する方が合理的であり、今回は上越新幹線区間のスピードアップ修正に留まりそうです。

強いて記すならば、やまびこ222号〜201号・218号〜221号の2往復についてはE3系併結を伴わない=E5系に代替が可能な列車として、今回改正で使用車両が変更・E2系の東北新幹線運用数も微減する動きはあるかもしれません。

JR東海:既定の車両更新に合わせた内容

先述の通り、JR東海ではダイヤ改正の内容自体が昨今の需要変化に起因したものではなかったため、車両の代替もそれに付随した動きとなりました。

JR東海では新造される315系の編成構成と数のみが示されており趣味者の予想が飛び交っていましたが、結果的には2021年度投入=2022年3月改正関連でデビューした315系8両編成は全て中央西線への投入となりました。

一方で車両淘汰は東海道線名古屋エリアの増結をしつつ、他社でもありがちな検査期限を効率よく活用する動きとなっており、中央西線の211系の部分代替と313系転属による東海道線名古屋地区の311系・静岡地区の211系をバランスよく置き換えるものとなりました。

・神領車両区既存車の動向

形式両数/装備編成番号2022/3
211-04両編成K51,K52廃車
211-50004両編成K1〜K20
211-50003両編成K101〜K117一部廃車
313-10004両編成B1〜B3
313-11004両編成B4〜B6
313-13002両編成B401〜B408
313-13002両編成
ワンマン
B501〜B524
313-15003両編成B101〜B103
→J151〜J153
大垣転属
313-16003両編成B104〜B107
→J161〜J164
大垣転属
313-17003両編成B151〜B153
→J171〜J173
大垣転属
313-80003両編成
ライナー
B201〜B206
→S1〜S6
静岡転属

・代替状況(2022/12/14現在)

大垣車両区神領車両区静岡車両区対象総数置換状況
211系
0番台
配置なし4両×2編成
(K51,K52)
配置なし8両全車8両
211系
5000番台
配置なし4両×20編成
(K1-K20)
3両×17編成
(K101-K117)
3両×20編成
(LL1-LL20)
3両×11編成
(SS1-SS11)
2両×9編成
(GG1-GG9)
242両K105,115,116
9両
LL2,3,5,10
12両
K107,114
6両
213系2両×14編成
(H1-H14)
配置なし配置なし28両
311系4両×15編成
(G1-G15)
配置なし配置なし60両G8,G12
8両
総数88両139両111両338両43両
※K107,K114編成は2022年度増備車のC8編成の運用入りと同時期で、3月改正とは別と捉えられます。

2023年3月改正も同様の傾向が推定できます。これは、2022年度投入分のうちC8編成が先行デビューし211系3編成2本を直接代替する動きが11月末にあった一方で、211系は中央西線用の3両・4両編成、静岡地区の編成とも重要部検査を直近でも施工されている点が挙げられます。

現時点では211系3両編成が廃車される一方で、211系4両編成には手をつけていない点が注目されます。次回改正も転属を伴う展開が想像され、引き続き予想が難しい会社です。

JR西日本:余剰車フル活用で世代交代

JR西日本の2022年3月改正に関連した車両の動きは、当初の代替計画を覆す大規模なものとなっています。

大きな動きとしては、日根野・網干・宮原の各地から223系が、奈良から221系がそれぞれ京都へ転入し、少しずつ京都支所に残存している113系・117系を代替しています。

・2022年3月改正の車両の動き

旧所属形式両数編成名備考
網干223系2000番台4両1本V64→R036000番台化
日根野223系2500番台4両2本HE419→R51
HE420→R52
宮原223系6000番台4両5本MA01→R201
MA02→R202
MA03→R203
MA04→R204
MA05→R205
網干223系2000番台6両2本J13→P01
J14→P02
6000番台化
奈良221系8両1本NB802→組換
(京都)221系(6両2本)NB802(-2両)→F01
K10(+2両)→F05

段階的に営業運転を開始しているものの、最注目株である2500番台は依然として営業運転には使用されていません。

代替対象となる旧来形式は一連の動きの前で113系が4両16編成13運用・117系が6両5編成4運用となっていました。

2022年3月改正関連では221系・223系の4両編成が7本増(8本転入するも、221系4両1本が組換で減少)・6両編成が4本増となっており、10月のダイヤ修正では4両編成4運用・6両編成2運用が代替されています。

2023年3月改正で未だ運用入りしていない車両に出番が訪れることは明らかですが、それ以外にも変化が想像できます。特に221系ではF02〜F04が欠番となっているなど、単純な同数代替ではない動き(8→6両へ一部減車?)となりそうです。

このほか、最近では207系が6両貫通編成・2両編成で組成され、それぞれX編成・Y編成を名乗っている姿が目撃されています。

2022年3月改正ではJR京都線・神戸線の本数が減った4扉車たちですが、207系・321系が宮原の223系が担っていたJR宝塚線の運用を2022年3月改正で一部持ち替える格好になっており大きな動きはありませんでした。

2023年3月改正では、既におおさか東線の直通快速運用撤退が明らかになっている4扉7両編成に今度こそ大きな動きが待っていることは想像に容易いところです。

JR西日本も引き続き転属を伴う大きな車両の動きが予想される状態で、今後の動向から目が離せません。

コメント

  1. ホロウィツィック より:

    313-8000ですが、大垣転属ではなくて静岡転属ではないでしょうか……?

    • 鉄道ファンの待合室 より:

      ホロウィツィックさま

      閲覧・コメントありがとうございます。
      ご指摘の通り誤植ですので、記事の訂正をさせていただきました。
      今後も当サイトのご愛顧をよろしくお願い申し上げます。

      鉄道ファンの待合室