【もうすぐ公表?】北陸新幹線敦賀駅延伸 新幹線と在来線特急のダイヤを考える

スポンサーリンク

2024年3月14日の北陸新幹線敦賀駅延伸が来春に迫り、開業に向けた準備が着々と進められています。

8月末に運行体系の概要が公表されていますが、具体的な時刻は未公表です。例年であれば12月末にダイヤ改正概要・1月後半に春の臨時列車が公表されるため、これらのリリースのタイミングでダイヤの全貌が明らかになるものと見られます。

本記事では前編として、北陸特急の近年の動きを振り返りつつダイヤ構成上の要となる各接続の制約を掘り下げます。

2024年3月16日の開業に向け準備が進行中

北陸新幹線は整備新幹線計画のうち、東京と大阪間を日本海側経由で運転する新幹線として整備が進められている路線で、このうち東京駅と高崎駅間は他の新幹線と共用されています。

1997年に高崎駅から長野駅間が「長野新幹線」の愛称で部分開業、2015年に長野駅から金沢駅間が延伸開業されており、2024年3月16日に金沢駅から敦賀駅(福井県)まで延伸されます。

上越妙高駅を境に東側はJR東日本が、西側はJR西日本の営業路線とされており、今回の延伸開業区間は並行在来線である北陸本線を管轄するJR西日本の営業路線となります。

途中に設けられる停車駅は小松・加賀温泉・芦原(あわら)温泉・福井・越前たけふの5駅で、このうち加賀温泉駅と越前たけふ駅は列車待避が可能な通過線を有する2面4線の駅とされています。

この両駅と福井駅には上下線間の渡り線が設けられており、輸送障害時や保守作業等で活用されるものとみられます。

金沢駅から先の区間も白山総合車両所までの区間は金沢駅延伸にあわせて整備されていました。

現行の運転体系を眺める

東京と北陸方面

1997年の長野新幹線・北越急行ほくほく線の開業から2015年3月以前まで、東京と長野間の移動は長野新幹線「あさま」が、富山・金沢間の移動は上越新幹線「とき」「たにがわ」と北越急行経由の在来線特急「はくたか」を越後湯沢駅で乗り継ぐルートがメインとされていました。

北陸新幹線が金沢駅まで延伸開業以降はこれらのルートが一つに結ばれ、一体的な輸送が実施されています。

北陸新幹線としては主要駅のみ停車の「かがやき」が朝晩中心に運行されるほか、終日に渡り長野駅以東は準速達・長野駅以西は概ね各駅停車の「はくたか」、そして長野駅以東のみ完結の「あさま」に分類されています。区間便・準速達・最速達の三種類に大別される構成は他系統の新幹線でも見られる体系です。

これに加え需要が見込まれる日は日中時間帯に「かがやき」の臨時列車を設定する構成とされています。

2022年3月のダイヤ改正では北陸新幹線「かがやき」10往復のうち、504号,508号,511号,517号の2往復4本が臨時列車化されました。いわゆる“準定期列車”として6000番台が付与された臨時列車扱いとされており、需要回復した昨今では毎日運転とされています。

大阪・京都と北陸方面

富山や金沢は歴史的経緯から関東圏以上に関西圏との繋がりが強いと言われており、北陸本線経由の在来線特急についてもかつての「雷鳥」、681系投入後の「サンダーバード」が大阪から多頻度で運行されてきました。これに加え、対中京圏輸送を担う「しらさぎ」も名古屋または米原から運転されており、特急街道の名に相応しい高頻度で都市間輸送列車が運転されてきました。

2015年3月の北陸新幹線金沢延伸前には「サンダーバード」・「しらさぎ」とも金沢駅を経由して富山駅(「サンダーバード」一部は魚津駅)を発着する列車が数多く運行されていましたが、同月以降は後述の七尾線直通列車を除き金沢駅始終着とされています。

「はくたか」・「しらさぎ」の富山駅発着削減分を埋め合わせる格好で新高岡・富山へのシャトル新幹線「つるぎ」が18往復設定されています。

七尾線直通特急

東京・名古屋・大阪の3方面に特急列車が行き交うネットワークを活用し、七尾線の電化から2015年まで「サンダーバード」「しらさぎ」「はくたか」に和倉温泉駅発着列車が設定されてきましたが、2015年3月以降は「サンダーバード」1往復を残して金沢駅〜和倉温泉駅間完結の「能登かがり火」に再編されました。

このほか、金沢駅〜和倉温泉駅間では臨時特急「花嫁のれん」が主に金曜日〜月曜日にかけて2往復運行されています。

北陸新幹線金沢延伸前に時折みられた「はくたか」長岡迂回の1コマ

ダイヤは“縛り”だらけ

2024年3月のダイヤ改正概要発表は、記者会見(YouTube アーカイブ)で補足された内容と過去の事例から例年通り12月下旬に実施されるものと推定されます。

概要発表から読み取れることと、接続先等の現状からの制約・条件を見ていきます。

東京方面の輸送体系

東京方面の輸送体系としては、東京駅〜大宮駅間を東北新幹線と、東京駅〜高崎駅間を上越新幹線と線路を共用している関係から、これらの区間の運転パターンは大きな変動が加わらないことが容易に想像できます。

北陸新幹線では、日中の定期「かがやき」が設定されていない時間帯は「はくたか」が長野駅以東の速達列車として「あさま」と遠近分離をしつつ長野駅で接続を取るダイヤ構成とされています。

朝晩の時間帯は「はくたか」の長野駅以東の途中停車駅数が増え、需要の多い朝上り・夜下りは「かがやき」「はくたか」が長野駅での緩急接続をして様々な区間利用に配慮しつつ、需要の多い長野駅以東の区間を「あさま」がフォローする構成となっています。

これに加え、終日に渡り上越新幹線と線路共用区間となる熊谷駅・本庄早稲田駅・高崎駅は上越新幹線の列車と相互に停車本数を確保しており、非常に完成度が高くなっています。

2024年3月16日の運行計画概要では、最速達種別「かがやき」のうち1往復が金沢駅発着、それ以外の9往復が敦賀駅発着とされています。10往復とも金沢までは最速達パターンを継承しており、金沢駅以遠も福井駅まで停車の最速達を貫く列車が5往復、金沢駅以遠は一部の駅に停車する「かがやき」が4往復とされています。

従来の上り1番列車である「かがやき500号」は金沢駅6:03発・下り最終列車である「かがやき519号」は金沢駅23:32着となっています。

新幹線の営業列車は6時から24時までとする制約から、記者会見では濁した回答ながらこれらの列車の設定意図を考えれば、東京対富山・金沢の利便性を大きく損なうこととなるこれらの列車が金沢止まりとして維持されることとなりそうです。

「はくたか」は15往復のうち1往復が長野駅〜金沢駅の区間運行、9往復が従来同様の東京駅〜金沢駅間の運行、そして5往復が敦賀駅発着とされています。

長野駅始終着の1往復ですが、これは現在も「はくたか」は長野からの始発下り・金沢からの最終上りの1往復が長野駅〜金沢駅間の区間運行となっているためこれが維持されるものとみられます。

東北・北海道新幹線では、仙台駅,盛岡駅,新青森駅〜新函館北斗駅間の区間列車が設定されている一方で、北陸新幹線では長野駅始終着の1往復が敦賀駅を始終着としなかった点は意外に感じますが、実用上は金沢駅で「つるぎ」との乗り継ぎが長野対小松以西の輸送の始発・最終となることが推察できます。

また、「かがやき」4往復が一部駅停車とされていますが、芦原温泉駅・加賀温泉駅に追加で停車する列車と、小松駅・越前たけふ駅に追加で停車する列車に大別されることが福井県選出の滝波参議院議員がXのポスト(Twitterのツイート)で引用リツイートにより示されています。

観光需要を狙いたい列車・対東京の速達性を求めたい列車で分離するのは至極妥当な選定と言えそうです。

ただし、記者会見では最初の1つ目に全く同じ質問が記者から挙がっていたものの、これから調整するとされています(JR西日本としては現時点で公表段階ではないことから明言を避けたものとみられます)。

このほか、公表された停車駅パターンから、金沢駅以西まで運転される「はくたか」は全て「かがやき」定期列車が設定されていない日中時間帯に運転されている列車であることも読み取れます。

佐久平駅通過は「かがやき559号」からの下り6本・「かがやき560号」からの上り5本となっており、現行ダイヤ構成が大きく崩れない限りはほぼほぼ断定できる状態です。

これは東京発着便は「概ね1時間に1本程度運行」されると記者会見で発言していた点とも合致しますので、東京から金沢駅以西への定期列車は朝晩は「かがやき」日中は「はくたか」と断定できます。

逆説的に、朝晩の時間帯の小松,加賀温泉,芦原温泉,越前たけふ駅〜黒部宇奈月温泉駅間相互で利用する場合は金沢駅での乗り継ぎとなることとなる模様であることが想像しやすくなりました。

名古屋方面の輸送体系

対中京圏の輸送体系としては、東海道新幹線「ひかり」に米原駅で接続する特急「しらさぎ」が大きな鍵を握っています。

敦賀駅延伸後は主に敦賀駅と米原駅を結ぶこととなりますが、東海道新幹線の「のぞみ12本ダイヤ」では毎時2本の「ひかり」のうち、名古屋駅以西各駅停車タイプ(名古屋止まり「こだま」を補完するタイプ)が米原駅で10分程度の接続列車とされています。

これらの列車のダイヤが変更される可能性は極めて低いことから、現実的には「しらさぎ」の運転時刻は分秒単位の微調整に留まると考えて間違いなさそうです。

また、従来の「しらさぎ」は敦賀駅以北で特急停車駅各駅に停車するいわゆる各駅停車タイプで運転されており、新たに公表された概要に記載された最速達列車の所要時間から、「しらさぎ」接続となる「つるぎ」は各駅停車タイプ(またはそれ以上に接続時間を要する速達タイプ)といった構成とされていることが読み取れます。

新規に延伸開業する北陸新幹線のダイヤが東海道新幹線のダイヤによって大枠が決まるという点が興味深いところです。

大阪方面の輸送体系

現状の「サンダーバード」は30分に1本程度運転される体制で、1時間間隔となる日中には臨時列車が挿入される格好となっています。

この発表では大阪駅発着の在来線特急「サンダーバード」25往復は全て北陸新幹線「つるぎ」と接続する……とは断言されておらず、在来線特急「サンダーバード」「しらさぎ」に接続する「つるぎ」が25往復運転される……とされている点に留意が必要です。

記者会見での情報などを加味すると、基本的には「サンダーバード」「しらさぎ」のほとんどの列車が「つるぎ」と接続することを目指したダイヤだが、一部に例外が生じる……といったところでしょうか。

そして、上記の通り「しらさぎ」は先述の通りほぼ時刻が固定に近い状態ですので、「サンダーバード」はある程度「しらさぎ」に寄せた発着時刻へ修正が加わるものと推察できます

ただし、京都駅〜大阪駅間の複々線外側では新快速が日中15分おきに運転されており、この合間に、関空特急「はるか」、智頭急行直通「スーパーはくと」、貨物列車など多種多方面の列車が運行されています。

また既存の「サンダーバード」は大阪駅から敦賀駅と比較して、敦賀駅から大阪駅への所要時間は湖西線内のダイヤ都合などで所要時間が僅かに長めです。

1時間間隔となっている日中時間帯は臨時列車・定期列車の設定を入れ替えることで解決しそうですが、朝晩には更に軽微な修正が加わりそうです。

15往復運転される「しらさぎ」接続タイプは全て各駅停車、「つるぎ」は速達9往復・各駅停車16往復となっていることから、「サンダーバード」「しらさぎ」両列車に接続する「つるぎ」は各駅停車タイプ、「サンダーバード」のみに接続する「つるぎ」はほとんどが速達タイプ……といったダイヤの骨格となっていることが読み取れます。

このほか新規開業区間の既存列車では「ダイナスター」(福井駅〜金沢駅:2往復)・「おはようエクスプレス」(敦賀駅→金沢駅:平日1本)・「おやすみエクスプレス」(金沢駅→敦賀駅:平日1本)が設定されており、単純に考えるとこれらの列車の代替として運転されそうにも思えます。

これらの代替となる列車は敦賀駅〜金沢駅間1本・敦賀駅〜富山駅間2本の接続しない列車と考えることができます。ただ、早朝の敦賀駅→富山駅方面・深夜の富山駅→敦賀駅方面は「かがやき」が担うこととなりますので、通過駅の補完程度の本数……と考えれば列車本数として半減するのもやむなしでしょうか。

次回記事ではこれらの制約からダイヤを構成してみて、より具体的に掘り下げます。

関連過去記事

コメント

  1. abeken1763 より:

    可能性があるのならば、北陸新幹線全列車全席指定化でしょう。なぜなら、今回の改正で名京阪方面から接続する在来線特急が全席指定化になる事もあり得る事(まだ発表してはいないが多分全席指定化すると予想している)、更にはその在来線特急に接続を前提として運行する「つるぎ」についても最速逹かつ全席指定の「かがやき」と同じ(金沢又は富山まで)と同じ停車パターンが5~6往復存在すること、全国各地で在来線特急の全列車全席指定化が拡大している事(首都圏〜千葉県間の特急や北海道の大半の特急が来年3月ダイヤ改正で全列車全席指定化が既に発表済みで、更に拡大もあり得る)と言ったところでしょうか。もうJR各社から自由席が消えてしまうのは時間の問題と言ったところでしょう。

  2. 埼玉県熊谷市銀座3ー68 安江秀彦 より:

    北陸新幹線は熊谷駅本庄早稲田駅に停車しないため、長野または高崎駅で乗り越えねばならず、夕方以後は本数も少なくなり30分も待たなくてはならず不便でした。
    待っている間に忘れ物までする羽目になったこともありました。
    中世武士の郷として、また寺院も北陸と武蔵の国とは深い縁があり(熊谷市妻沼の斎藤実盛公の郷は鯖江市、その他近辺には曹洞宗・永平寺関係の寺も多い。高齢になりましたので、富山・高岡にもいきますが、乗り継ぎを考えると憂鬱です。)今後も沢山の乗客を期待されるならば是非北陸新幹線の各駅と乗り換えなしで相互交流で繋がるようにしていただきたいです。
    海無し・魅力的農業県の埼玉県北部と冬場雪に閉ざされる北陸との交流は新しい農業の形態も可能となると思います。
    また、冬場のスキー等のレジャーとゴルフ場で働く人達の働き方改革にもなると思います。