【30年差の最新設計】東京メトロ南北線9000系増備車が落成

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目黒線系統の各社局線で6両編成の8両化を行う準備が進められています。東京メトロでは9000系のうち15編成に増結が行われる見通しです。

2021年10月8日には、このうち最初の増結車となる9109F用の2両が川崎車両神戸本社(旧:川崎重工業兵庫工場)を出場しました。

新横浜線開業準備と8両化

相模鉄道と東急電鉄では、2022年度下半期の新横浜線開業に向けて工事を進めています。

こちらは相鉄の都心直通プロジェクトの一環ですが、これに合わせる格好で以前より混雑が激しかった都営三田線と、東横線の混雑緩和などを目的に目蒲線を改良した目黒線は従来の6両編成から8両への増結を進めることとなりました。

一方で、東京メトロ南北線・埼玉高速鉄道埼玉スタジアム線の利用者数は前述路線よりは落ち着いているためか、両社はやや消極的な姿勢も見られました。

最終的には両社とも設備は8両編成へ対応(建設時より準備工事済)・東京メトロについては保有車両の一部を8両編成とすることとなりました。

落成した9000系を見る

今回落成したのは、東京メトロ9000系9109編成に増結される中間付随車2両です。車号は9409と9509となっており、新造時より欠番となっていた箇所に連結されます。号車表記からも新4号車・新5号車となることが伺えます。

東京メトロ9000系は営団地下鉄(帝都高速度交通営団)9000系として1990年に試作車・翌年に量産車が登場したため、形式内での経年差は30年にもなります。編成内では、最も経年が開くこととなりそうな9109Fで四半世紀の経年差です。

車体設計としては、従来の9000系量産車とは異なり、現在東京メトロで量産が続く17000系・18000系の設計を反映しています。10000系から続く日立製作所A-trainなどで採用される、妻面部の面取りが連結時に目立ちそうです。

側面の帯デザインについては、9101F〜9108FのB修繕(大規模リニューアル工事)施工車両と同様になっています。

9109Fは8両化とともにB修繕工事を施工するのか(この場合は全編成を大急ぎでB修繕するのか・一部編成だけ同時とするのか)、各編成の8両化で先行して変更するのかなど、今後の展開予想が難しいところです。

目立つ点として、9000系では一般的な貫通幌ですが、今回の増結車両では従来車との互換性を持たせつつ、10000系列以降で採用されたガラス扉の幅広設計という個性的な仕様です。

従来車への連結だけであればこのような新規設計をするとも考えにくいところで、車齢差から将来的な転用を選択肢に含ませるための設計でしょうか。ファン目線では、同世代・将来の増結の可能性あり・製造計画数も同数の17000系の10両化などが想像しやすいところです。

一方で、正確な寸法は定かではないものの、同世代各形式ほどの広幅でもなく、9000系増結車用の独自設計とみられます。

基本設計が17000系・18000系設計となっている一方で、側面の行き先表示器だけは13000系以降のナンバリング表示対応の長い表示器ではなく、従来車両の寸法を踏襲しています。

このほか、川崎重工業は分社化(子会社化)により2021年10月1日に「川崎車両株式会社」となり、この中間増結車が同社として初の落成車両となっています。

増結は9109F〜9123Fが対象か

南北線は路線延伸により複数回の増備を繰り返した歴史から、編成ごとに車齢が異なります。

このうち、第1期開業(駒込〜赤羽岩淵間)の時点で運用されていた試作車・1次車の32両を含む8編成48両は、2016年度よりB修繕工事(大規模修繕工事)を実施済です。この工事を受けた編成は、従来の帯デザインを基調としつつ、波状の個性的なデザインとなりました。

先述の8編成は、走行機器類の一新に合わせて4M4T→3M3Tと電動車を1両減らしており(9300が電装解除)、将来的な8両化の対象から外されていることが伺える状態でした。

一方で、今回の増備車両が中間付随車2両であることから、9109F以降を対象に当初の設計通りに中間付随車を挿入することで4M4T(電動車4両・付随車4両)の編成構成とすることが伺えます。

東京メトロの調達で15編成30両の増結であることが示されていたため、これと合致する動きとなります。

名称製造年次(年度)該当編成製造名目備考
A編成試作車(1990)
1次車(1991-2)
01,03,05,07F1期開業4両で落成
偶数編成電動車で6両化
B編成先頭:1次車(1991-2)
中間:2次車(1995)
02,04,06,08F1期開業(先頭)
四ツ谷延伸(中間)
4両で落成
新製中間車4両で6両化
C編成2次車(1995)
3次車(1997)
09-13F
14,15F
四ツ谷延伸
溜池山王延伸
D編成4次車(1999-2000)16-21F目黒延伸
E編成5次車(2009)22,23F増発・予備確保デザイン大規模変更

3M3Tで新造されているD編成・E編成については、8両化の時点で既存の中間付随車を電動車化出来る設計です。

こちらも計画通り推移するのか、その他の方法が選択されるのかは現時点では定かではありません。

東急電鉄3000系の増結事例では、3M3T構成の現行車両の中間付随車を電動化する準備工事をしており、新造車は中間付随車2両とする設計でした。しかし、こちらでは中間電動車と中間付随車のユニットを連結する格好となっています。

この事例と同様に、D編成・E編成が電動化の準備設計を放棄して増結車を1M1Tで製造する可能性も現時点では否定できません。

この電動車化を行う編成群は車齢の浅いものが該当し、機器更新時期と増結時期は一致させる方が合理的です。修繕の同時進行が行われるのか・帯色はどうするのかなど、引き続き経過を見守りたいところです。

同時期に製造・将来の増結設計も近かった両社ですが、20年以上の時を経て増結をする際の動きが異なる結果となるのか

さらに視野を広げると、東京都交通局の編成単位への置き換え・埼玉高速鉄道の自社保有車両の増結見送りなど、同世代・同系統で運転されている4社局で方針も車両の動きも明確に異なる点は、置き換え時期でも新車でもない中途半端な時期の増結で頭を悩ませた各社局関係者の苦悩が伺い知れると言えるでしょう。

相鉄直通は行わず……?

現行ダイヤでは早朝深夜を除き目黒駅で全列車が直通する体系ですが、東京メトロ・東京都交通局所属車両の相鉄線直通はあまり期待出来ない動向です。

これは、相鉄線内で必要なJR東日本タイプのデジタル無線アンテナやATS-P形列車自動制御装置の設置がこれまで一切行われていないことが理由です。

これにより、両社局の車両は8両化された車両についても当面は新横浜駅以北での折り返しとなりそうです。

対する相鉄側の車両も目黒駅以西に留まる可能性も十分考えられ、この場合は相鉄から東急電鉄を経由して目黒駅以東へ直通する列車は東急電鉄所属車両による限定的なものとなりそうです。

相鉄にとっては東京・品川方面の直通が叶わなかったことに続き、東横線直通・目黒線直通も渋谷・目黒から先へのダイレクトな運行が望まないため、利用者数の伸び悩みも心配されます。

特に目黒線直通は1面2線の目黒駅での折り返し・白金高輪〜目黒間の2駅間だけ途絶えることで本数の割に利便性が悪いなど、デメリットが多い印象です。

一方の三田線・南北線ユーザーにとっては最大の売りである新横浜駅へのアクセス向上の恩恵も受けられない(東京駅や品川駅の利用で十分)ため、両者の大本命はやはり品川延伸と言わざるを得ません。

ただ、白金高輪以北〜目黒以西の乗り通しユーザーは多いですので、彼らの利便性向上のためにも車両運用制約によるダイヤ制約は避けることに期待したいですね。

参考:同系統の新車・東京メトロの近年増備車両など

コメント

  1. イシロ より:

    >先述の8編成は、走行機器類の一新に合わせて4M4T→3M3Tと電動車を1両減らしており(9300が電装解除)、将来的な8両化の対象から外されていることが伺える状態でした。

    の箇所、4M4Tではなく2M4Tでは?
    (コメント非公開のまま直してくださって全然かまいませんけど)