【東北新幹線で地震被害】H5系・E6系で脱線被害・“救済臨”E257系5000番台で運転

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2021年3月16日深夜に福島県沖を震源とする非常に大きな地震が発生しました。

東北新幹線で脱線が確認されているほか、17日には早くも東北新幹線利用者の救済を目的として、上野駅〜黒磯駅間・酒田駅〜秋田駅間で臨時快速列車が運転されています。

東日本大震災から11年、再びの大きな地震

2021年3月16日深夜に福島県沖を震源とする非常に大きな地震が発生しました。

特に被害の大きかった東北新幹線では、やまびこ223号に使用されていたH5系H2編成+E6系Z9編成が脱線したことが地震直後からのSNS投稿・その後の報道で明らかになっています。

17日にはJR東日本から被災状況が公表されており、上記の脱線のほか電柱の損傷(いわゆる架線柱が折れる)・軌道変位(線路が歪む)・土木構造物の損傷(橋脚のコンクリート剥がれ)・駅設備破損が写真付きで示されています(外部リンク)。

東北新幹線では1995年の阪神淡路大震災を契機に緊急耐震補強対策を施した(外部リンク)ほか、2011年の東日本大震災での被害を受けて更なる耐震工事を実施しており(外部PDF)、橋脚類や架線柱などの補強工事が進められています。

しかしながら、2021年2月に発生した地震では未施工箇所を中心に架線柱が折れる被害があり、今回の地震による被害はそれ以上のものとみられます。

やまびこ223号について「脱線」という用語で呼称することは事故調査等でも用いられる正確な表現ですが、一般層にとってのイメージとは異なる印象も受けます。センセーショナルな報道を避けるのであれば、“脱輪”といった表現が適当な範疇でしょうか。

一般の方がイメージする派手な脱線事故のうち、線路から大きく外れてしまうことを「逸脱」・列車自体が横転してしまうことを「転覆」と呼称します。JR東日本では新幹線の地震対策の一環で、この「逸脱」を防止する工事を進めてきました(外部PDF)。

車両の台車にL字型のガイドを設けることで、“脱輪”した状態でもそれ以上遠くへ外れることがないようにする改修を済ませ、その後も線路や設備側の改良が進められている最中です。

今回の地震でも1両は大きい被害が見られますが、ほとんどの車両は線路の近くで収まっているのもこれらの改修があってこそと考えられます。また、今回脱線したやまびこ223号では、幸いにもけが人は発生していません。(注) 過去の大規模な地震を契機に、日々アップデートされている安全対策の賜物でしょう。

一方で、以前から整備新幹線区間の工事費用負担や、事業者によって異なる対策など課題も残ります。この辺りは引き続き議論が進むことに期待したいところです。

(3/21 19:40加筆)やまびこ223号乗客3名から怪我の申告があったことが報じられています。

(参考)過去の地震による脱線

地震による脱線は4度目の事例で、1973年の東海道新幹線脱線事故を含めた脱線事例は5度目となりました。

発生日路線・車両その後
2004年
中越地震
上越新幹線とき325号
200系K25編成
廃車
1両保存
2011年
東日本大震災
東北新幹線試運転列車
E2系J69編成
修繕
2019年
熊本地震
九州新幹線回送列車
800系U005編成
廃車
3両保管
地震名称は正式なものではなく、一般に略される呼称です。

(参考)地震により大きな揺れが確認された大宮操車場ライブカメラ

翌朝から“救済臨”運転の動き

2022年3月17日の極めて早いタイミングで羽越本線で延長運転実施がリリースされています(外部PDF)。

この延長運転の対象とされた「いなほ5号」「いなほ10号」は2022年3月のダイヤ改正で酒田〜秋田間を区間減便としつつ、繁忙期は臨時列車で秋田へ延長運転することとされていました(過去記事)。この運転体制を活用し、酒田〜秋田間を臨時快速列車として延長運転されています。

E653系「いなほ」編成を使用して運転されており、これに関連して本改正で4両の「しらゆき」編成充当に改められた1往復分についても7両編成に変更されています。

このほか、“波動用”のE257系5000番台OM-91編成を使用した臨時快速列車が上野駅〜黒磯駅間で運転されています。

この“救済臨”は東北新幹線の運転再開区間である東京〜那須塩原駅間を補完するに留まっており、利用も限定的なものとなっています。前年2月の地震の際にも同様の事象が見られ、一見すると無駄の多い列車設定にも思えます。

しかしながら、エリア内の広い範囲で地震被害が想定され、特に深夜帯で被害の全貌が掴みにくい最中では、合理的な判断を下すためには時間を要します。とりあえず打てる限りの選択肢を用意しつつ、被害状況・運転再開状況を見極めて運転体系を確立する動きは、公共交通機関としての使命を果たしたものと言って間違いありません。

前回同様の展開か〜常磐線・東北本線で臨時列車運転へ

東北新幹線を巡っては、2011年3月11日の東日本大震災以降も地震の被害を受けており、2021年2月13日夜に発生した地震でも架線柱損傷による長期不通が発生しました。

この際には在来線を活用した臨時列車が多数設定されており、先に復旧した常磐線特急「ひたち」の仙台発着3往復に加え、いわき駅発着列車を快速列車として仙台駅まで延長運転・羽越本線特急「いなほ」の酒田駅発着列車を秋田駅まで延長運転する体制がすぐに敷かれました(過去記事)。

その後は更に那須塩原駅〜仙台駅でE653系新潟車を使用した臨時快速列車も加わりました(過去記事1過去記事2)。

記事公開時点では、春休み期間の三連休を含む3月18日〜21日の運転計画のみ先行して公表されています(外部PDF)。東京駅〜那須塩原駅間・盛岡駅〜新青森駅間では臨時ダイヤで運転するとともに、少なくとも21日までは那須塩原駅間〜盛岡駅間は終日運転を見合わせる計画です。

また、朝時点では航空会社へ協力要請の記述がありましたが、夕方の発表では「東北本線・常磐線で臨時列車を運転するとともに、航空会社およびバス事業者にもご協力をお願いしております」との記載となりました。

新幹線・在来線ともに臨時運転の詳細は追々示されることとなりますが、前年2月に実施された常磐線特急「ひたち」延長運転・東北本線臨時快速列車運転の体制が予想されます。なお仙台支社管内の在来線は18日始発までに順次運転が再開される計画です(外部PDF)。

(3/18 14:00加筆) 当初発表通りは叶わず、東北本線の郡山〜白石駅間・常磐線の広野〜山下駅間は運転を見合わせています。

東北新幹線の損傷状況は2021年2月の地震以上のものと推定されますので、運休の長期化は避けられそうにありません。今後の運転再開見通しは断片的な公表ですが、再開には相当な時間がかかることが予想されます。

春休みのお出かけや新生活に向けて移動需要が活発となる時期に大きな痛手となりますが、臨時列車の素早い設定は昨年と同様に、利用者の便宜はもちろん沿線ファンを元気付ける存在となることを願って止みません。

末筆ながら、この度の地震で被害に遭われた皆様を心よりお見舞い申し上げるとともに、移動の足を確保すべく奔走された運輸業界の皆様、復旧に向けた工事に携わる皆様に感謝申し上げます。

参考:過去の救済臨の動き

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