【1往復増強】常磐線特急「ひたち」臨時ダイヤで仙台発着が復旧〜週末は混雑

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2022年3月16日夜の地震で被害を受けた常磐線ですが、24日より臨時ダイヤで運転を再開しています。

これにより、東京から仙台までのルートが東北新幹線+東北本線経由と常磐線経由のWルート体制となり、輸送力が増強されています。ある程度の輸送力が確保されたものの、ふたたび週末を迎え混雑している様子です。

福島県沖地震で不通が長期化した常磐線

JR東日本では2022年3月16日の福島県沖を震源とする地震により、南東北エリアを中心に被害が発生しています。

東北新幹線ではやまびこ223号が脱線したほか、架線柱・軌道・土木構造物や駅構内に損傷が発生しており、4月20日ごろの全線運転再開に向けて復旧作業が進められています。

在来線のほとんどが18日の始発までに運転を再開したものの、震源地に最も近い場所を通る常磐線では、不通期間・区間が長くなっていました。

常磐線については21日まで富岡駅〜新地駅間で運転を見合わせが続いており、このうち富岡駅〜原ノ町駅間については22日始発列車より運転を再開され、仙台駅発着の特急「ひたち」の区間運休も原ノ町駅以北に縮まりました。残されていた原ノ町駅〜新地駅間についても、発表通り24日に運転再開しています。

その他の線区の動向については前回記事の通りです。

原ノ町駅以北は定期「ひたち」も快速に

23日に公開されたダイヤ(外部PDF 下り上り)で注目される点として、2020年3月改正で“復活”となった仙台駅発着の特急「ひたち」3往復について、原ノ町駅以北を区間運休・臨時快速として運転として再開している点が注目されます。

原ノ町駅〜仙台駅間は徐行区間が多く残されており、更に単線区間を含むことからダイヤを大きく変更する必要が生じたものと考えられます。

これに加え、いわき駅発着の特急「ひたち8号」「ひたち9号」の2列車については、いわき駅〜仙台駅間が臨時快速として延長運転が実施されます。

仙台駅の発着時刻を見比べると、どの列車も30分から50分程度も発着時刻が異なります。特急列車として払い戻し対象となるのは2時間以上の遅れですので、下り列車は列車の遅れとして扱うこと自体は可能です。

一方で、上り列車は都心側のダイヤを維持して運行すべく通常ダイヤと比べて早発とする必要があります。既に発売を開始していた特急列車に対して大幅な前倒しとなる時刻変更をすることは現実的ではありません。

・仙台駅発着時刻の違いと、前年の地震対応

列車名2022年
通常ダイヤ
2022年
3月24日〜
2021年
2月事例
ひたち3号12:29着13:17着12:31着
ひたち9号いわき行16:19着15:42着
ひたち13号17:25着18:14着17:26着
ひたち19号20:28着21:14着20:28着
ひたち25号いわき行いわき行23:39着
ひたち8号いわき発5:23発6:48発
ひたち14号10:14発9:41発10:13発
ひたち22号いわき発いわき発13:57発
ひたち26号16:06発15:35発16:11発
ひたち30号18:02発17:34発18:02発
赤字斜体は原ノ町駅以北を臨時快速青太字はいわき駅以北を臨時快速

その他の対処法としては現在運行している東北新幹線の郡山駅・一ノ関駅発着は特急料金が発生しているように、定期列車3本を全区間運休扱いとし、原ノ町駅以南は同時刻の臨時列車とすることも不可能ではありません。

ただし、こちらもグリーン車以外全車自由席として扱っている新幹線の事例と同様に、指定席の変更対応の煩雑さを排除するために料金収入を犠牲にしているものと言えそうです。現状としては最適解と思えます。

また、前年にも実施されている通り、2020年改正の復旧時点で「ひたち」2往復については延長運転が可能なダイヤ構成とされていました。今回はこれが活用出来ず、通常ダイヤと比べて制約の多い合間でなんとか1往復増発するなど、関係者の苦労が垣間見られます。

東北本線経由の臨時快速とともに、しばらくは関東と東北を繋ぐ大役を務めることとなります。

当初の計画を覆し、通常時の供給過多を承知で10両編成での復旧としたのはまさに英断で、非常に優れた経営判断だったことは今後も語り継がれることとなりそうです。

週末となり混雑も

Wルートとなったことで東京〜仙台間の実用に耐える列車が倍増しているものの、通常の東北新幹線の輸送力と比較すると貧弱であることは明らかです。SNS上では混雑する「なすの号」の様子なども多く見られました。

JR東日本からは3月28日以降のダイヤも発表(外部PDF)されており、下り列車が1本・上り列車が3本増強されています。しかし、こちらでも基本的な車両運用構成は変更されておらず、乗り通し需要が見込まれる臨時快速の接続列車をはじめとする多くの列車がE5系の10両編成での運転となっています。

背景は断定できませんが、3月22日〜27日のダイヤ・28日以降のダイヤともに17両編成の郡山駅発着列車は全てE2系+E3系のいわゆる“やまびこ+つばさ”タイプの編成とされており、E6系連結の“はやぶさ+こまち”タイプの編成は那須塩原駅以南発着とされています。

旅客案内や設備、乗務員采配などの何らかの事情により意図的に避けているものと考えられます。

現在の運転区間を考えると、特に東北側の福島総合運輸区・仙台新幹線運輸区の乗務員の活用に大きな制約が生じていることが想像されます。普通列車や臨時快速に便乗させて移動させている分も拘束時間が発生するため、1名あたりの乗務可能な本数は大きく減少します。一方で、東京新幹線運輸区は上越新幹線や北陸新幹線の行路があるため、受け持てる本数は平時と同程度に限られます。

そのため、運用できる車両・ダイヤがあったとしても人が居ない……といった状況が発生していても不思議ではありません。少なくともこの課題は福島までの復旧である程度解消が見込まれますので、もうしばらくの辛抱でしょうか。

ただし、4月2日に予定されている福島駅までの運転再開後の臨時快速運行には車両確保の課題も見受けられ、福島駅以北は引き続き不便である状態が残りそう(過去記事)です。

また、E5系と比べて輸送力のあるE2系がダイヤ改正で定期運用減少となっており、仙台側に残留していて十分に活用出来ない点も惜しいところです。

置き換え途上で輸送力が勝る上越新幹線用のE2系・E7系が活用出来れば若干の改善が出来そうですが、今回はそこまでの対応はなさそうです。

JR東日本では近年新たに新幹線統括本部が設けられ、車両基地や乗務員区所の再編も進められています。現在は例外的に地域支社管轄とされている、新幹線と在来線の双方を管轄する乗務員区所(秋田・長野・福島)の処遇なども変化があるかもしれません。

中長期視点で考えると、乗務員確保の都合で臨時ダイヤとする必要があるのであれば、以前から研究が進められているドライバレス化の進行で解消も期待できます。

今後もより様々なアプローチで災害に強い新幹線となることを願って止みません。

関連記事

・2022年3月地震によるこれまでの動向

・2022年3月改正の動き

・2021年2月地震の際の対応

・2020年3月改正(仙台「ひたち」復活)の動き

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